「100日後に死ぬワニ」炎上騒動の波紋…“アンチ商業主義”ファンを刺激

「100日後に死ぬワニ」炎上騒動の波紋…“アンチ商業主義”ファンを刺激

 昨年12月12日の連載開始から「主人公が100日後に死ぬ」という設定で1日1話ずつツイッター上で掲載されていた4コママンガ「100日後に死ぬワニ」(きくちゆうき作)。今月20日に最終回を迎えたが、終了直後から“大炎上”してしまった。

 同作はワニの平凡な日常を描き、4コマ目の下に、ほのぼのとした内容とは不釣り合いな「死まであと〇日」というカウントダウンの文言が入る。ネット上で注目され、作者のフォロワー数は200万を超えていた。

 炎上の理由は、最終回と同時に突如発表された数々のメディアミックス。「書籍化決定」「映画化決定」「グッズ・イベントなど続々」の告知が流れ、「いきものがかり」とのコラボムービーも公開された。

 あまりに鮮やかなタイミングにネット民からは「最初から商売ありきだったのか」などの声が上がり、さらに「作者は電通と関係していた」などと書き込まれた。つまり個人が細々とやっていたほのぼのマンガが、実は大手資本や広告代理店による壮大な仕掛けだったと疑われたわけだ。

 これに対し作者は、作品は自分ひとりのアイデアで始めたものであること、さまざまなメディアミックスは、作品が話題になるにつれ話が来たものであることを即座に動画で説明した。

 この騒動にタレントのカンニング竹山(48)が「批判しているのがバカじゃないのかと思います」とコメントしたことをはじめ、タレントやコメンテーターからも異論が噴出。マンガやネットに詳しい多摩美術大学「漫画文化論」講師の竹熊健太郎氏はこう話す。

「作者本人も言ってる通り、最初は本当に個人でやっていたと思います。今、出版社の編集者はネット上で話題になっているマンガを血眼になって探していますから、当然書籍化はありうる話だと思います。また200万フォロワーといえば、どんな会社でも企画が通るでしょう。次々と協賛企業が現れたのもうなずけます」

■“アンチ商業主義”ファンを刺激

 しかし“嫌儲(けんちょ)”などのネットスラングがあるように、炎上の背景には、ネット上でマネタイズすることへの反感もあったようだ。

「“コミケ(コミックマーケット)”などにも昔からありましたが、『アンチ商業主義』のような一定の心情を持つマンガファンはいるんですね。しかし今作は、フリーの作家がSNSでどのように作品を発表しビジネスにつなげていくかの教科書と言えるでしょう。死とは程遠い愛らしい絵柄と淡々とした展開で、カウントダウンが続けば、そりゃあ興味をそそりますよ。“100日”という期間もネット上では長いほうで、絶妙でした」(竹熊氏)

 見事なお手並みで、死んだワニくんは今後も書籍や映画で生き続けることになった。