演劇界コロナ対策の救世主へ!「蜷川ハッチ」開放で換気「あずみ」開演に歓喜

演劇界コロナ対策の救世主へ!「蜷川ハッチ」開放で換気「あずみ」開演に歓喜

 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の当初の方針を受け、19日まで上演を中止していた舞台「あずみ~戦国編~」などの公演が20日、行われた。「あずみ…」が行われた東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンでは開演中に開けることが少ない「蜷川ハッチ」と呼ばれる搬入口を開いて会場内の換気を徹底した。

 70分間の第1幕が終わり、15分間の休憩に入ると「ガガガガガ…」と大きな音とともに、屋外のまぶしい光が会場内に差し込んだ。音を立てて開いたのは、ステージ後方にある5メートル四方の扉。舞台セットや機材などを出し入れする時に使う搬入口だ。

 搬出入時以外で開けることは少ないが、ウイルスの感染対策で厚生労働省などが「換気」の重要性を指摘していることから、舞台関係者が開演前と休憩中の開扉を考案。客席から搬入口の先に、渋谷の街の買い物客や親子連れらが見え、観客の20代男性は「劇場では珍しい光景が目の前に広がっていてちょっと笑ってしまった。でも換気が徹底されているという面で客としては安心」と主催者側の対策を評価した。

 この搬入口は、演出家の故蜷川幸雄さん(16年死去、享年80)が演出で開けたことから、演劇関係者の間で「蜷川ハッチ」と呼ばれている。「蜷川ハッチ」が使われたのは、武田真治(47)や藤原竜也(37)が主演した「身毒(しんとく)丸」や、V6の森田剛(41)が主演した「血は立ったまま眠っている」など。開いた搬入口から敵がステージ上に来襲してくるシーンなどを迫力満点に演出した。この日は休憩時間に十分換気した後、閉められ、上演が再開された。

 劇場関係者は「蜷川ハッチが感染症対策に使われるとは思いもしませんでした」と話す。搬入口がステージの真後ろにある造りは珍しいが、舞台袖にある劇場は少なくないという。「今回の“蜷川ハッチ”がヒントになって劇場の換気を良くする方法を見つける主催者が出てくれば、上演を目指す演劇界を救うことになるかもしれない」と期待を口にする演劇関係者もいる。

 「あずみ…」は14日の開幕が延期となり、この日が初日となった。昼夜2公演で計約1000人を動員。29日まで同所で上演される。

 ▼「あずみ~戦国編~」 刺客として育てられた10代の少女が一人で戦乱の世に身を投じ、次々と危機を乗り越えていくストーリー。小山ゆう氏の人気漫画「あずみ」が原作。主演は元「欅坂46」の今泉佑唯(21、写真)で、映画版で03、05年に上戸彩(34)、舞台版で05、06年に黒木メイサ(31)、15、16年に川栄李奈(25)が演じたのに続く4代目。瀬戸利樹(24)味方良介(27)らが共演。