語るも涙の「花嫁の父」残酷物語…連れてきたのはウガンダ【ダンカンの笑撃回顧録】

語るも涙の「花嫁の父」残酷物語…連れてきたのはウガンダ【ダンカンの笑撃回顧録】

【ダンカンの笑撃回顧録】#32

「幼きわが娘2人……このかわいい2人の将来に幸あれ……」とポツリと呟く父親はふっと頭の片隅でいつも知らず知らずに思い浮かべてしまう。「……でも、どれほど愛おしくとも、女の子だからいずれは見知らぬ男に奪われていってしまうのか……いやいや、2人の娘が幸せであってくれるなら、それは親のワガママというもの……」。それをまるで自分を恥じるかのように即座に打ち消すのであった……。

 それから二十数年の歳月が過ぎ、まさかその愛すべき父親に、人生の生き地獄のようなことが待ち受けていようとは、だれが想像したであろうか……。

 これは聞くも涙、語るも涙の「花嫁の父 悪夢物語」のノンフィクションである。

 まず、最初に父親に人災が襲いかかったのは1994年のことであった。その日、長女は父親にいつになく神妙な声で話しかけた。

「お父さん、会ってもらいたい人がいるの……」

 父は娘のその一言ですべてを悟った。そして、心の中で「会ってもらいたい人……ついにその日がきたか、いや、娘も27歳、嫁ぐには早過ぎず遅過ぎず……ここは父親として娘の幸せを一番に思うのが親の正しい態度というものであろう」と、何度となく自分の気持ちを咀嚼すると、「うん、おまえがいいと思うなら……いいんじゃないかな」と静かに言った。

「よかった……でも、その人15歳年上なの……」「えっ、40過ぎの中年男!? そんなやつに手塩にかけた娘を奪い去られるのか……」と一瞬、頭に血が上る自分を感じたが、幸せそうにほほ笑む娘の顔を見て「う、うん……そうか、おまえがいいと思うんなら……いいんじゃないかな」と動揺を隠して、さきほどと同じ言葉を返したのだった。

 その、おまえがいいと思うんならの男こそ、何を隠そう、公称115キロでつねにムシャムシャと何かを食っているから口元が脂でテカテカと光っているウガンダさん(写真左)であったのだ。

 ウガンダさんを娘に紹介されたその瞬間、父は、その場で舌を噛み切って自決しようと決めた(と、俺は思うんだけどなあ……)。いったい父はどのような悪行を重ねたというのだ!? いや、実際そんなコトなど一切ないのに、この後を知れば、あなたもそう考えざるをえないと思うのだ……。

 数年後、下の娘が「会ってほしい人がいる」と一人の男を紹介した。父親の前に立つその男は、頭を角刈りに揃え、頬を東北出身者と思わせるほどに赤く染めた、たけし軍団のラッシャー板前(同右)であった。

 父親はその時ほど生まれてきたことを恨んだことはなかった(と思う)。な、なんでウガンダの後にラッシャーなんだ!! こんなお笑いに奪い去られるために娘たちを愛して育てたんじゃないのにウウウ……(涙)と、父はその場で腹をかっさばき自決しようと決めた(と、俺は思うんだけどなあ……)。

 これほどまでに悲しき花嫁の父を俺はかつて耳にしたことはない……。=つづく

(ダンカン/お笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家)