TBS社長も年頭所感で「今年は半沢直樹に尽きます」と熱弁…大ヒット作続編に早くも集まる期待と不安

引用元:スポーツ報知
TBS社長も年頭所感で「今年は半沢直樹に尽きます」と熱弁…大ヒット作続編に早くも集まる期待と不安

 広がり続ける新型コロナウイルスの余波。3月初旬から中旬にかけて行われる予定だった民放各局の4月番組改編説明会も5局すべて直前で中止となった。

 ある民放幹部は「力の入った新番組が多かっただけに説明会は開きたかった。でも、日本中が新型コロナ余波に見舞われている中、『なんだ、記者を集めて宣伝の場を設けるのか』という批判は必至。マスコミとして、それはできなかった」と、本音を吐露した。

 そんな中、TBSも3日に行うはずだった説明会を中止。同日午後、各マスコミにその場で配るはずだった資料を配布した。改編スローガンは「やっぱり家族で」。改編率は全日(午前6時~午前0時)7・59%、ゴールデン(午後7時~10時)23・10%、プライム(午後7時~11時)27・50%と大規模なものとなった。

 私もさっそく分厚い資料を手にしたが、その中でも4ページにわたって紹介され、最も力がこもっていたのが、堺雅人(46)主演の日曜劇場「半沢直樹」(日曜・後9時)の紹介だった。

 2013年7月7日から9月22日にかけ全10話が放送され、最終回で平均視聴率42・2%を記録。同枠の木村拓哉(47)主演「ビューティフルライフ」(2000年1月クール)の41・3%を抜いて、平成歴代1位の好数字をマークしたモンスター・ドラマとして記憶している人も多いだろう。

 池井戸潤(56)さんのベストセラーが原作の熱過ぎるほどの企業ドラマ。堺演じる銀行員・半沢が上司の不正を暴いて口にする「やられたらやり返す。倍返しだ!!」の名セリフは「じぇじぇじぇ」などと並び、その年の新語・流行語大賞に輝いた。

 今回、ついに7年ぶりのドラマ化にこぎ着けたTBS社内の熱気を実感させられる場面があった。

 先月26日、東京・赤坂の同局で行われた佐々木卓社長(60)の定例会見。今年最初の会見ということで、所感を聞かれた同社長はまず、「感染が広がっている新型コロナウイルスについてであります。社会に混乱を招いている状態ですが、メディアとしては冷静かつ正確な報道に務めたい。まず我々が感染の拡大防止に努め、安全確保に務めます。当社でも対策本部をつくって、対策に務めています」と、まずは新型コロナ対策を口にした。

 驚かされたのは、その後に続いた言葉だった。

 「年頭の所感で個別の作品について触れるのは異例ですが、今年は特に『半沢直樹』に尽きます。すでにクランクインしていると聞いていますし、どんなできばえになっているのか、ドキドキします」と期待を寄せた。

 今、「ドラマのTBS」が完全復活を遂げている。今年1月クールも1日に放送された俳優・竹内涼真(26)主演の日曜劇場「テセウスの船」(日曜・後9時)第7話の平均視聴率が番組最高の14・0%と3話連続で番組最高視聴率を更新。3日に放送された女優・上白石萌音(21)主演「恋はつづくよどこまでも」(火曜・後10時)第8話も平均視聴率12・1%と3週連続で番組最高視聴率を更新している。

 そんな追い風の中、帰ってきた「半沢直樹」への視聴者の期待もまた高い。

 3日に改編資料を受け取った私は、さっそく「報知WEB」に「堺雅人主演の日曜劇場『半沢直樹』7年ぶり復活…TBS4月改編発表」という記事をアップした。すると、即座に読者からの熱いコメントが殺到した。

 「前回の最終回42・2%はすごい数字。続編が見られることは素直にうれしい」

 「前作のクオリティーは高かったし、久しぶりに職場で話題になるドラマだった。7年ぶりか。待ち遠しい」

 「これは絶対見る。待ったよ! 7年間」

 期待感にあふれたコメントがある一方、否定的なコメントもあった。

 「7年はブランクがあき過ぎ。フジテレビの『結婚できない男』の続編が不調だったように間のあいた続編は失敗するのでは」

 「7年の間に社会状況も変わっている。働き方改革の壁の中、ドラマを見ても現実との間にギャップがあるのでは…」

 「昭和から平成にかけての上司に逆らえない部下が多かった時代のドラマという気がする。パワハラ、セクハラなど下手に部下を叱れない現代にはマッチしない部分もあるのでは」

 これらの声に代表されるように7年の間に企業内外を取り巻く環境は確かに激変した。机をバンバンとたたきまくって部下を威嚇した緋田康人(56)演じた小木曽人事部次長のようなキャラクターが令和の世に成り立つのか。私自身、魅力的な敵役がとっちめられる場面にカタルシスを覚えた記憶があるだけに今から心配になるのは確かだ。

 これらの点は本来、改編発表会で編成トップたちに質問するべきことだった。しかし、質問の機会は失われた。蛇足かも知れないが、私自身の「半沢直樹」への思いを書いておく。

 13年版を毎回、夢中になってリアルタイムで見たし、最終回での香川照之(54)演じる大和田常務の半沢への“カクカク土下座”には胸がすく思いがしたし、滝藤賢一(43)演じる真面目な行員・近藤の窮地には「近藤ちゃん…」と、あたかも自分の友人のような思いを胸に視聴した。

 そして何より堺の熱演。早大演劇研究会出身の堺を劇団「東京オレンジ」時代から注目していた私は毎回、「うまいなあ」「男としての色気もすごいなあ」と、画面に見入ってきた。その後、16年のNHK大河「真田丸」ヒットでのトップ俳優への仲間入りも皆さん、ご存じの通りだ。

 原作の力、福澤克雄氏らの演出力に何より俳優たちの抜群の演技。7年前、持てる力の全てを結集して成功に導いたチームが今回の続編も手がけるだけに、ある程度の成功は間違いないと思う。

 堺自身が会見資料でクランクイン初日の気持ちを「実際に現場に入ってみると、スタッフのみなさんの勢いが『つきすぎている』といっても良いくらいすごかった。取り残されそうで、ちょっと慌てました」とつづっている通り、制作チーム、さらにTBS幹部たちのこの作品にかける思いは熱すぎて、やけどしそうなほどだ。

 さあ、時は来た。42・2%の平成最高の視聴率をたたき出した超話題作の続編は令和でもまたNO1となるのか。答えは、もうすぐ出る。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆2013年7月期放送「半沢直樹」の視聴率推移

 ▽第1話 19・4%

 ▽第2話 21・8%

 ▽第3話 22・9%

 ▽第4話 27・6%

 ▽第5話 29・0%

 ▽第6話 29・0%

 ▽第7話 30・0%

 ▽第8話 32・9%

 ▽第9話 35・9%

 ▽第10話 42・2%

(数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ) 報知新聞社