映画版『架空OL日記』はドラマと変わらないスケールが肝

映画版『架空OL日記』はドラマと変わらないスケールが肝

 近年、脚本家としても上り調子でマルチな才能が注目を浴びるお笑い芸人のバカリズム。その彼が原作・脚本・主演を務めた2017年放送の連続ドラマの映画版『架空OL日記』が公開中だ。本作の映画版ならではの魅力とはどこにあるのか?

『架空OL日記』未公開写真

 乗客をやり直したい過去まで戻すことができる不思議なタクシー運転手を描く「素敵な選TAXI」(2014)、10人の愛人をもつドラマプロデューサーのブラックコメディー「黒い十人の女」(2016)など、シニカルな笑いが光るドラマ脚本を多く手掛けてきたバカリズム。そもそもドラマ「架空OL日記」が生まれるきっかけとなったのが、彼がまだ売れていなかったころに、銀行に勤務するOLに成りすまし、2006年から3年にわたってつづったブログ。のちに書籍化され、連ドラ版は第55回ギャラクシー奨励賞を受賞するなど高い評価を受けた。 ドラマは、バカリズム演じる入行6年目、26歳の「私」を中心に、同期の真紀(夏帆)、先輩の小峰様(臼田あさ美)と酒木さん(山田真歩)、後輩の紗英ちゃん(佐藤玲)が更衣室や食堂、帰り道などで繰り広げるOLトークを描くもので、事件が起きたとしても更衣室のハロゲンが壊れるなどささいなこと。「酒木さんはなぜマツキヨではなくマツモトキヨシと呼ぶのか」など、「あるある(どーでもいい)」な日常描写のほか、ルール、協調性を重んじ強い絆で結ばれた個性豊かなOLたちのたくまし過ぎるキャラクター描写が痛快だ。 映画版ではシム・ウンギョン、石橋菜津美、志田未来、坂井真紀ら新キャストも参加。しかし、スケールはそのまま。海外ロケや爆破シーンなど大掛かりな仕掛けがあるわけでもなく、ドラマと同じくひたすらいつものOLトークが繰り広げられる。バカリズム自身もインタビューで、「あのまったりした会話を映画館に観に来てくれる人もひっくるめての“狂気”というか、それも面白い試みかなと思います」と語っていたが、実際に鑑賞した人たちには変わらないからこその「安心感」がウケている。

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