アニメーション業界を舞台に、その中で働く人々の奮闘を描いたテレビアニメ「SHIROBAKO」(2014~15年放送)。その約5年ぶりの最新作、劇場版『SHIROBAKO』が現在公開されている。そこで、本作の主人公で制作進行の宮森あおいを演じた声優の木村珠莉にインタビュー!初のレギュラー作品である本作への思いや劇場版の見どころを聞いてみた。
【写真を見る】テレビシリーズに続き劇場版でも宮森あおいを演じた木村珠莉
「SHIROBAKO」とは、アニメ制作会社「武蔵野アニメーション(通称ムサニ)」に勤務する新人制作進行のあおいを中心に、アニメーターの安原絵麻、新人声優の坂木しずか、CGクリエイターの藤堂美沙、脚本家志望の大学生・今井みどりら5人がそれぞれの夢を追いかける物語。このほか、監督やプロデューサー、美術や音楽スタッフなど様々なアニメ制作にかかわる人たちが登場し、ギリギリの納期や進行の遅れといったシビアな“業界あるある”も描き話題となった。
■ 「(声優は)自分には向いていないんじゃないかと思っていました…」
「アイドルマスター シンデレラガールズ」や「ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝」といった人気作に出演する木村だが、「SHIROBAKO」以前は声優を続けるか否かで迷いもあったと話す。「オーディションを受けても箸にも棒にも掛からなくて、自分には向いていないんじゃないかと思っていました。そんな時、マネージャーさんから『「SHIROBAKO」決まったよ!』と言ってもらい、路上で泣きながら抱き合ったのを覚えています(笑)」
そんな木村にとって本作は初めて主人公を演じた作品。プレッシャーなどはなかったのだろうか?
「アニメのお仕事は人生3回目でガチガチに緊張していましたが、本編のアフレコ前に、(劇中アニメ)『えくそだすっ!』のガヤ役で(絵麻役の)佳村はるかちゃんと(しずか役の)千菅春香ちゃんと参加したんです。その時に2人とは打ち解けられました。また、主役なので、座組を良くせねば!という気持ちがあり、(共演の)檜山修之さんたち先輩に声をかけて飲みに行ったりもしましたね。先輩方には本当に良くしてもらって、茅野愛衣さんに『衣装大変でしょ?』と服を譲ってもらっていました」
■ 「スタッフさんたちのことを思い浮かべてアフレコに臨めるようになった」
本作を通じて、「SHIROBAKO」の制作進行のスタッフとも交流があったそう。「最終話放送後の打ち上げでお会いでき、皆さんが『よかった~』と言いながら輪になって、達成感にあふれている様子が印象的で、青春だな~と。その時のスタッフさんたちの髪が伸び放題だったのですが、宮森さんもプリン頭なので、そこはリアルなんだなと実感しましたね。でも後日、取材で(制作会社の)ピーエーワークスさんにお伺いする機会があり、その際は髪型もスッキリ整えられていました!」
「SHIROBAKO」出演は声優としても得難い経験だったと続ける。「1本のアニメを作るうえで、こんなにも大勢の方がかかわっていることに驚きました。オーディションの前から企画は動いていたはずなので、本当に長い時間をかけて作られているんですよね。新人の頃は誰しも、(いっぱいいっぱいで)そういったことにあまり気づけないと思います。でも、『SHIROBAKO』に参加したことで、スタッフさんたちのことを思い浮かべてアフレコに臨めるようになったので、とても感謝しています!」
■ 「ずかちゃんが報われた時はめちゃくちゃうれしかった!」
同じ声優として、あおい以外では“ずかちゃん”ことしずかへの思いも強いと教えてくれた。「一番リアルなキャラクターだと思うんです。絵麻なんかは落ち込んでいるとすぐに表情に出るのですが、そういう人って現実には少ないんじゃないでしょうか?ずかちゃんだと、(劇中アニメ)『第三飛行少女隊』のオーディションに落ちた時も『全然大丈夫だよ!』と笑顔で…。でも、家に帰るとお酒を飲みながら愚痴ったりして、すごく共感してしまうんです」
うまくいかない状態が続くしずかだが、物語の終盤、『第三飛行少女隊』で“ルーシー”というキャラクターの声優に決まる。「結果が出ない気持ちはよく理解できるので、ずかちゃんが報われた時はめちゃくちゃうれしかったです!台本の香盤表に役名が載っているのですが、そこに“ルーシー:千菅春香”と書いてあるのを見つけて(!!)。読む前から泣いてしまいました(笑)」
■ 「(あおいは)かなりのアメと鞭の使い手になっています」
テレビシリーズでは、ムサニが元請けとして「えくそだすっ!」「第三飛行少女隊」を制作し、無事に最終回を迎えた姿が描かれた。劇場版ではさらに躍進したムサニが見られるのかと思いきや…。ある出来事がきっかけで主要なスタッフがいなくなるなど、すっかり落ちぶれてしまったところから始まる。
「劇場版が決まった時はすごくワクワクしていたのですが、台本を読んでその気持ちがぶち壊されました(笑)。テレビシリーズと同じく、スタッフみんなで完成したアニメの放送を観るシーンがあるのですが、今回は状況が全然違っていて、悲しい気持ちになりましたね…」
しかしそんなムサニに、劇場版アニメ制作の話が舞い込んでくる。その中心人物としてチームを引っ張るのは、木村が演じるあおいだ。「やるべきことが決まって、一気にエンジンがかかり、アニメ作りに取り組んでいく姿がうれしかったですね。宮森さんはテレビシリーズでは変顔をしたり、派手なリアクションを取るなど、コメディリリーフなキャラクターだったのですが、今回はすごく頼もしくなっていますよ。(制作進行の先輩の)矢野さんや(ベテランアニメーターの)杉江さんたちに助けてもらっていたのが、劇場版ではあおいがプロデューサーになり、ほかのスタッフを先導していきます。監督を尻に敷いた感じや冷静に状況判断しているのが、本当に成長したなと感じますし、かなりのアメと鞭の使い手になっています(笑)」
■ 「何か壁にぶつかっているのならそれを乗り越えるヒントがもらえる作品」
劇場版には、アニメの企画・プロデュースを行うウエスタンエンタテイメント所属のアシスタントプロデューサーで、あおいと抜群(?)のコンビプレーを見せる新キャラ・宮井楓が登場する。
「宮井さんはすごく仕事ができて、しっかりした女性。宮森さんとは出会ってすぐに焼肉屋さんで食事をするのですが、そこでお酒を飲んでべろんべろんに酔っぱらってしまって、仕事や上司への愚痴を言い合うんです(笑)。でも、宮森さんにとって初めての社外の同志というか、似た境遇を分かち会える人でもあると思うんです。劇場版ではパートナーのような関係で活躍するので、続編があるなら、二人がタッグを組んで作品を作っていくところも見てみたいです」
テレビシリーズでは、あおいが“なぜアニメを作るのか?”というテーマに悩み、答えを見つけようとする姿も描かれた。そして、一つの目標に向けて大勢が一途に努力する光景は視聴者に、前へ進む活力を与えたはず。
「アニメーション業界が舞台の作品ですが、仕事をしていくうえでのモチベーションになったり、いま何か壁にぶつかっているのならそれを乗り越えるヒントがもらえる作品だと思います。劇場版『SHIROBAKO』は、テレビシリーズから観ていた人にとって胸がいっぱいになるシーンが散りばめられていますし、何度も勇気をくれる作品です。これから作品をご覧になる方には、宮森さんたちがどのように立ち上がっていくのかをぜひ見守っていただきたいです!」(Movie Walker・取材・文/トライワークス(平尾嘉浩))
『SHIROBAKO』木村珠莉が思い描くみゃーもりと新キャラの関係性「2人で作品を作っていくところも見てみたい」
引用元:Movie Walker