ウルトラマンにもあった「お蔵入り」映画。中止につぐ中止も、その「魂」は生き残り…

引用元:マグミクス
ウルトラマンにもあった「お蔵入り」映画。中止につぐ中止も、その「魂」は生き残り…

 今年2020年、子年の元旦に、映画『ネズラ1964』が製作されることが明らかになりました。この作品は製作中止となった大映の特撮映画『大群獣ネズラ』の舞台裏に光をあてるものです。洋邦東西ジャンルを問わず、実現しなかった映像作品の企画は数多く存在します。そのなかから、企画されながらも実現しなかった「ウルトラシリーズ」の映画作品を取り上げたいと思います。

【画像】幻の特撮映画『大群獣ネズラ』の貴重なスチールと、新たに蘇る「ネズラ」(8枚)

 まず紹介したいのが、『元祖ウルトラマン 怪獣聖書』(以下、『怪獣聖書』)です。円谷プロダクションと日本アート・シアター・ギルド(ATG)の共同製作で、1982年に劇場用作品として企画されたものです。脚本を執筆したのは佐々木守氏で、監督は実相寺昭雄氏が務める予定でした。実相寺監督と佐々木氏は『ウルトラマン』(1966年~1967年)や『怪奇大作戦』(1968年~1969年)、『シルバー仮面』(1971年~1972年)などで、多くの傑作・怪作を生み出してきたコンビです。

 近い将来に地球人が宇宙の植民地化を進めるのではと危惧し、人類に警告する宇宙人“カナンガ星人”とウルトラマンが対峙するのが『怪獣聖書』の内容です。遮光器土偶の姿をしたカナンガ星人の言葉を翻訳する巫女のような役割のヒロイン・桂木美矢子は、大和民族が支配する以前の縄文時代の日本を理想郷と主張。ウルトラマンもカナンガ星人の警告に対して、自身が監視人として地球に残り、人類が宇宙へ侵略の手を伸ばした場合、全力でそれを阻止すると最終的に返答します。

『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」や『怪奇大作戦』第25話「京都買います」など、実相寺監督と佐々木氏がこれまで描いてきたテーマをより先鋭化させた作品が『怪獣聖書』だったといえるでしょう。竜宮伝説や羽衣伝説、騎馬民族征服王朝説、さらには企画当時の現代日本への痛烈な批判をおりまぜた『怪獣聖書』は、実現していれば「ウルトラシリーズ」のなかでもかなりの異色作になっていたのではと思います。