映画『風の電話』の公開記念舞台挨拶が25日、新宿ピカデリーで行われ、モトーラ世理奈、西島秀俊、三浦友和の主要キャストと諏訪敦彦監督が舞台挨拶に立ち、本作に込めた思いを語った。
映画は24日に全国公開。モトーラが「公開初日の昨日、私もピカデリーに見に来て……公開を迎えられてうれしいです。一番後ろの一番端っこの席に座っていました」と話すと、西島は「ここに来たの？」と驚いていた。
岩手県の大槌町にある、天国につながる電話「風の電話」をモチーフにした映画。東日本大震災で家族を失い広島に住む伯母の元に身を寄せている女子高校生ハルが、伯母が倒れたことをきっかけに、大槌町へ向かう。途中、ハルはさまざまな人に出会う。
モトーラはオーディションを経て、ハル役に決定。台本を読んでオーディションに来るようにという指示だったそうだが「……台本を読んでやりたくないと思ったんです。なぜかというと、小さいころから親子の話とか家族が亡くなっちゃう話は一番悲しくなっちゃうもので、今回はピンポイントでそういう話だったので、もうやだって。でも、オーディションの日は来てしまったので……オーディションに行って。やっぱり、この話を読んで自分が辛いという気持ちが出てきてしまって何もできなかったんです」。監督は「来てくれてよかった。来てくれなかったらこの映画が出来なかったかもしれない」と苦笑い。西島も「来てくれなかったら…ねえ」と笑って、監督と顔を見合わせた。
諏訪監督がモトーラを起用した理由は「映画的な存在だと思った」ことだという。「この間、今関あきよし監督と話していたんです。この後封切られる、モトーラさんが主演する映画（『恋恋豆花』）があるんですけど、今関さんは2000人のなかから選んだ、と。モトーラさんと他の人が違う、モトーラさんだけが違うように見えたと。僕もそうでした。他にいないという感じ。今日はちゃんとたくさんしゃべっているんですけど、最初お会いした時はひとつ質問すると数分答えが返ってこない。それを待ってるんですけど、それを見ていて飽きないというか、ずっとみていられるなって。それは映画的な存在だなと思いました」
ハルと一緒に旅をすることになる元原発作業員の森尾を演じる西島は、モトーラについて「現場であってすぐ、この人は現場でやらなければいけないことを一番分かっている人、諏訪監督の現場でやらなきゃいけないこと、やってはいけないことがはっきり分かっている人なんだなと思いました。僕が教えてほしいぐらいだった。しっかり出来上がっていた」と絶賛。
三浦がモトーラの印象について語ろうとすると、三浦がモトーラに「見ないでくれる（笑）。この人に見られると緊張するんですよ」と助けを求めるように客席を見まわした。2人に褒められるとモトーラは少し沈黙したあと「……うれしいのと、ありがとうごさいます」。数分とはいかなかったが、諏訪監督が話していた「答えが返ってこない」モードに、報道陣も客席も彼女の「映画的な存在」であるところを体感。西島と三浦の印象について聞かれると、「三浦というよりも“公平”さんと話している感じで、西島さんも西島さんと話した記憶がなくて……カメラが回っていないところでも“森尾”として話していたんだなと思います」の答えだった。
本作について監督は、「日本を見ていったとき、いろんな人がいろんな状況のなかでいろんな困難を生きている、そういう印象が強かった。いろんな傷を負っていたりとかそういうことも見えてきて、そこにそっと寄り添うようなものでありたいと思っていました」という。
モトーラは「ハルとの旅を楽しんでください。温かい空気に包まれて帰っていただけたうれしいなと思います」と、PRした。
映画はベルリン国際映画祭へ出品されることも報告された。
