いよいよ開幕! 格闘ゲームの世界大会「EVO Japan 2020」、見どころ徹底解説

引用元:Impress Watch
いよいよ開幕! 格闘ゲームの世界大会「EVO Japan 2020」、見どころ徹底解説

 “格闘ゲーム界最高峰のeスポーツ大会”と謳われる「EVO」。ウメハラ選手の「背水の逆転劇」をはじめ様々な名場面を生んできた「EVO」は、格闘ゲーマーなら誰しもが憧れる夢の舞台だ。

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【EVO 2019】

 「EVO」はラスベガス開催が恒例となっているが、日本からアメリカへ渡航するのはいささかハードルが高い。そんな我々に向けて一昨年から開催されているのが日本版「EVO」である「EVO Japan」だ。今年は幕張メッセで開催される本大会は、「EVO」のブランドはそのままに、日本人プレーヤーも気軽に参加できる大会となっている。日程は1月24日より3日間ので

【EVO Japan 2019】

 時期的には、格ゲープロシーン的にはオフシーズンにあたるため、先月12月における世界一が決まる世界大会のようなチリチリとした緊張感こそないものの、昨年の「EVO Japan」で優勝し、一躍スターとなったパキスタン人選手Arslan Ash選手を輩出するなど熱い名場面を多く残している。

 今年も数多くの有名プロプレーヤーの参戦が決まっているほか、まだ見ぬ強豪選手の台頭もあり得るため、eスポーツファンには目の離せない大会だ。本家「EVO」そして「EVO Japan」共に現地観戦の経験がある筆者が、今年の「EVO Japan」の見どころを紹介したい。

【EVO Japan 2020】

■シーズン5初の大規模大会!「ストリートファイターV」の見所とは?

 現在の格闘ゲームeスポーツシーンを語るにあたって、どうしても避けては通れないのが「ストリートファイターV」(以下SFV)だ。前作「ストリートファイターIV」から格ゲープロツアーの先駆けである「カプコンプロツアー」を開催し着実にファンを増やしていった本タイトルは、今最も活発なeスポーツシーンを持つ格ゲータイトルといっても過言ではない。「EVO Japan 2020」の「SFV」部門にも、1,400人を超えるプレーヤーがエントリーしており、その優勝賞金は100万円だ。

 発売から4年目に突入した「SFV」だが、ゲームとしての完成度はここへきて最高潮に達しようとしている。というのも、昨年12月16日に配信されたシーズン5アップデートが過去最高の出来栄えなのだ。全キャラに新Vスキルが追加され、戦略に幅が増えたほか、中堅以下のキャラが軒並み上方修正を受けたことで、キャラバランスが格段に向上している。ウメハラ選手はじめ数多くのトッププレーヤーも調整内容を絶賛しており、配信から1カ月以上経つ今でも強キャラ・弱キャラキャラの評価が定まっていないことも、シーズン5のバランスの良さを表している。

 「EVO Japan 2020」は、期待がかかるシーズン5において初めての1,000人を超える規模の世界大会となる。正直なところ、誰がどのキャラを使って優勝するのか検討がつかないが、そのこと自体が「SFV」部門の一番の見どころと言えよう。まだ周知されていない戦術やセットプレイが「EVO Japan」にて一斉にお披露目されることが予想されるため、混戦になること間違いなしだ。勝ち抜くためには、新シーズンをいち早く飲み込む“対応力”と、新しい戦術を編み出すを“開発力”が求められる大会となるだろう。

 そんな中、筆者が特に注目する選手を何名か紹介したい。まずは韓国のInfiltration選手だ。Infiltration選手は、「EVO 2012」や「EVO 2016」をはじめ様々な世界大会で成績を残す古豪プレーヤーで、「開発力」に定評があり新しいゲームで実力を発揮する選手だ。本大会が新シーズンでの戦いということもあり、かなり上位に食い込んでくるのではないかと予想する。順当に勝ち抜いていけばTOP64で日本の強豪、藤村選手と対戦することになるため、そこが山場となるか。

 実力は申し分ないInfiltration選手だが、実は諸事情から2019年シーズンのカプコンプロツアーには出場できなくなり、1年ほど表舞台から姿を消していた。「SFV」をプレイし続けているかどうかも不明だったInfiltration選手だが、先日開催された「Red Bull Kumite 2019」の当日予選に参戦すると、並みいる強豪選手を倒しグランドファイナルまで勝ち残ってみせた。カプコンプロツアーには顔を見せていなかったが、その実力は今も健在ということだ。彼にとって久々の大舞台となる「EVO Japan 2020」、復帰を待ちわびていたファンのためにも是非活躍してほしいところだ。

 次に紹介したいのはアメリカのPunk選手だ。Punk選手はその反応・判断能力の早さ、俗に言う“人間性能”の高さで、一時期は世界最強プレーヤーの呼び声を欲しいままにしたほどのプレーヤーだ。昨シーズンのプロツアーポイントランキングも、ボンちゃん選手やときど選手を抑えて堂々の1位で終了している。順当に勝ち抜いていけば、TOP48で日本のSako選手との対戦となるが、ここを勝てればかなりの高順位が狙えることだろう。

 Punk選手は配信を見る限りでは、今シーズンは春麗を使用していく方針のようだ。春麗は全キャラ中でも強化点が特に多いキャラクターだが、中でも特筆すべきはしゃがみ中キックの強化だろう。元来しゃがみ中キックのヒット確認の精度がずば抜けていたPunk選手だが、今シーズン春麗のしゃがみ中キックのヒットスタンが2フレーム増えたことで、Punk春麗の中足が猛威をふるうことは間違いなしだ。

 そんなPunk選手だが、これだけ注目されているにも関わらずこれまで「EVO」、「EVO Japan」のどちらにおいても優勝経験がない。Punk選手は「EVO」という大会に相当な思い入れがあるそうで、「EVO 2017」で準優勝に終わった際、ステージ上で見せた涙は見る者を感動させた。彼としても参加するからには「今度こそ」という想いがあるはずだ。是非「EVO Japan 2020」で雪辱を晴らしてもらいたい。

■パキスタンの至宝Arslan Ash選手のリベンジなるか? こちらも混戦間違いなしの「鉄拳7」!

 もう一つの注目競技が「鉄拳7」だ。 本大会の「鉄拳7」部門には、現時点で900人を超えるプレーヤーがエントリーしており、優勝賞金には100万円が用意されている。「鉄拳7」も昨年12月9日にシーズン3アップデートが配信されたばかりで、コミュニティは再びの盛り上がりを見せている。「SFV」同様、「鉄拳7」部門でも今までに見られなかった新キャラ、新戦術が多くみられることだろう。

 eスポーツファンであれば昨年は「鉄拳7」の名を聞く機会が多かったのではないだろうか。知らない方のために説明すると昨年の「鉄拳7」シーンでは、彗星のごとく現れたパキスタンのプレーヤーたちが驚異の強さを見せ、これまで強豪とされてきた日本人・韓国人プレーヤーを軒並み倒していった。発展途上国であるパキスタンから強豪プレーヤーが次々と現れたため「まるで少年漫画のようだ」と話題になったのだ。そんな“パキスタンブーム”のそもそもの始まりも、実は「EVO Japan」の舞台なのだ。

 パキスタンプレーヤーの中で一番最初にその名を世界に知らしめ、今ではレッドブルアスリートとなったArslan Ash選手。パキスタンブームは彼から始まったといっても過言ではないわけだが、彼が初めて優勝した世界大会が福岡で開催された「EVO Japan 2019」だ。どうやらAtif Butt選手やAwais Honey選手含むパキスタン人選手の多くはビジネスビザが取得できず、参加できないようだが、大本命のAsh選手はディフェンディングチャンピオンとして「EVO Japan 2020」に参戦する。

 注目のArslan Ash選手は一美とギースをメインキャラに据え、その卓越した間合い管理能力で「EVO Japan 2019」、「EVO 2019」の両大会で優勝を果たしたプレーヤーだ。同一の年に両大会を優勝した経験があるプレーヤーは、鉄拳界ではAsh選手ただ1人だ。しかし、勢いの最中に優勝候補筆頭として挑んだTWT決勝では、韓国のKnee選手らに阻まれTOP8進出も叶わない結果に終わり、世界大会の洗礼を浴びた。世界中のプレーヤーがAsh対策をしてきた結果、手も足も出ない結果に終わってしまったことは、本人としても悔しかっただろう。筆者としては、Ash選手が悔しさの底から這いあがり、2年連続「EVO Japan」優勝に輝くさまを見てみたい。

 しかし注目すべき選手はAsh選手だけではない。前述のKnee選手や、日本のノビ選手、さらにはTWT決勝で見事優勝を果たしたチクリン選手もエントリーしている。地元開催でありながら、実は今まで「EVO Japan」の鉄拳部門を日本人選手が優勝したことは1度もないため、今年こそ日本勢の活躍にも期待したい。チクリン選手とAsh選手は、順当に勝ち抜いていけばTOP192とかなり早い段階で対戦することになるため、このカードをどちらが勝つかは見ものだ。

 もう一つ本大会「鉄拳7」部門の注目点となるのが、新規に追加されたリロイというキャラクターだ。コミュニティ内ではもっぱら“壊れキャラ”と評されているこのキャラクターだが、実際のところ発生3フレームの当身や発生10フレームのダウン技、さらにはガードで-3フレームのジャンプステータス・コンボ始動技をも併せ持つ、かなり高水準のキャラクターとなっている。正直なところ、未だ配信から1か月強しか経ってないが、リロイが「EVO Japan」を制してもおかしくないと考えている人は少なくない。多くの選手たちがリロイを練習しているようだが、もしかするとまだ見ぬプレーヤーがリロイを使って強豪プレーヤーたちを倒していく、そんな展開もあり得る。注目だ。

■参加人数はなんと3,000人! 大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL

 2018年12月7日に発売され、世界的大ヒットとなった「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」(以下スマブラ)だが、eスポーツシーンにおいてもその人気はすさまじい。「EVO Japan 2020」における「スマブラ」部門のエントリー数は現時点で2,988名に到達しており、これはもちろん全種目中最多だ。そして驚くべきことに、本部門には賞金が用意されていない。2,988名のプレーヤーのほとんどは国内のプレーヤーであり、「賞金がなくとも自分の腕を試したい」。そんな闘志にあふれたプレーヤーばかりで3,000人が集まっているのだ。「EVO Japan 2020」はまさに「スマブラ」日本一決定戦となるだろう。

 注目選手としては、まずRaito選手がエントリーしている。Raito選手はWiiU時代から活躍するダックハント使いのプレーヤーで、世界一のダックハント使いの呼び声も高い。「EVO 2019」では日本人選手最高の5位に入賞するなど、決してメジャーではないダックハントというキャラクターで、様々な実績を残してきたプレーヤーだ。さらに最近のRaito選手はDLC追加キャラのバンジョー&カズーイも起用しており、その精度はかなりのものだ。レアキャラにこだわるRaito選手が優勝すれば、盛り上がること間違いなしだ。

 さらに本大会には「EVO 2019」でTOP8入りを果たしたもう一人の日本人選手、Zackray選手もエントリーしている。Zackray選手はRaito選手とは対照的に、複数の高水準のキャラクターを持ちキャラに据える、多キャラ使いのプレーヤーだ。ウルフやロボットといったキャラをはじめ、最近ではジョーカーやパルテナなどのキャラクターも使いこなし、そのプレイイングは見る者を魅了する華麗さを持つ。さらに昨年10月にはアメリカで開催された「The Big House 9」では、自身初のS-tier大会の優勝を果たしている。今年18歳になる若手プレーヤーZackray選手だが、その実力はどんな古豪にも劣らない、優勝候補筆頭の一人だ。

■他にも沢山の見どころが!

 以上の3つが、「EVO Japan 2020」における筆者の選ぶ特に注目すべき3タイトルだ。しかし、本大会にはまだまだ見どころがある。メインタイトルは上記3つに「サムライスピリッツ」、「Blazblue Cross Tag Battle」、「Soul Calibur VI」の3タイトルが加わった全6タイトルで、どのゲームも違った色を持ち、見どころ満載だ。

 また、メインタイトルのほかにもコミュニティ主導のサイドトーナメントが数多く開催される予定なので、レトロゲーマーはこちらも要チェックだ。意外とこういう大会で、超ハイレベルな「ストII」の試合が繰り広げられていたりするのである。加えて出展エリアには、ゲーム周辺機器メーカーをはじめとする計16の企業ブースが設けられる予定だ。アーケードコントローラーやそのパーツに興味がある方は、出展エリアに行けば何か掘り出し物が見つかる可能性もある。

【サイドトーナメント】

 「EVO Japan 2020」は、“格闘ゲームの祭典”と呼ばれる「EVO」のブランドをしっかり引き継いだ、格闘ゲーム好きも、そうでない人も存分に楽しめる内容となっている。配信で観戦するのもいいが、せっかくの日本開催なので、時間がある方には是非現地に赴いて、プレーヤーたちの熱量を感じ取っていただきたい。 GAME Watch,スサキリョウタ