阪本順治の新作「一度も撃ってません」4月公開、石橋蓮司が約18年ぶり映画主演

引用元:映画ナタリー

阪本順治の監督最新作「一度も撃ってません」が、4月より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開される。

1989年発表の「どついたるねん」以来、長編デビュー30周年を迎えた阪本。本作の主人公は、ハードボイルドを気取っている時代遅れな74歳の作家・市川進だ。彼には旧友・石田和行から依頼を請け負う、伝説の殺し屋“サイレントキラー”というもう1つの顔がある。しかし彼自身は標的の行動をリサーチするだけで、実際の殺しは今西友也という仲間が行っていた。

昼と夜の顔を持ち合わせた男・市川進 / 御前零児(ペンネーム)を演じたのは石橋蓮司。このたび「黄昏流星群 星のレストラン」以来約18年ぶりに映画主演を務めた。また市川に殺しを依頼する石田役で岸部一徳、市川の妻・弥生役で大楠道代、市川と旧知の女性・玉淀ひかる役で桃井かおりが出演している。ドラマ「探偵物語」シリーズや「野獣死すべし」の脚本家・丸山昇一が、阪本と「行きずりの街」以来9年ぶりにタッグを組んだ。

石橋は「この映画は、お利口さんに生きる事ができず不器用で、でも心情的には熱いものがあって、時代に合わせて生きていく事ができない人間たちの物語です。それが昭和の人間の良さであり、“悪さ”とも思う。そんな作品になってくれればと思っています」と本作を紹介。阪本は「どうか、日頃の鬱憤をありったけ持ち込んで、私たちの、架空に遊ぶ無邪気なさまを観ていただければ、きっと心は晴れやかに!」と呼びかけている。

■ 石橋蓮司 コメント
この作品は、撮影スケジュールをとにかくこなす、という事だけでなく、昔僕たちが若い時代に作っていた映画のように、アイデアを出し合ってやれた現場でした。夢を諦めながらも必死にしがみついていく我々世代の大人達の話です。
言ってみれば、“昭和の時代の挽歌”というのでしょうか。
ハードボイルドな作品ではあるのですが、あまりシリアス過ぎると共感を呼ばないので、「あくまで、これは喜劇なのだ」という阪本監督の姿勢には賛成でした。真面目にやればやるほど、ある意味喜劇になるかもしれない、はたまたリアリティとして受けとる人もいるでしょう。共感してくれる人がいてくれたら嬉しいですね。
ハードボイルド映画ですから、撮影中、もっとかっこよく歩きたいな、なんて思うんですが、年なんですね、まっすぐ歩こうとするけど余計によれちゃったりして。笑
映画の基礎を作ってきた70年代の厳しく激しい昭和の映画作りの現場や、80~90年代も経験してきましたが、逆に一番のロマンを作ってきた時代だったな、と感じています。この映画は、お利口さんに生きる事ができず不器用で、でも心情的には熱いものがあって、時代に合わせて生きていく事ができない人間たちの物語です。それが昭和の人間の良さであり、“悪さ”とも思う。
そんな作品になってくれればと思っています。是非面白がって見て頂けたらと思います。

■ 阪本順治 コメント
これは、たとえ、ひとところにいようとも、流れ者たちのものがたり。排気ガスや煤煙や紫煙を肺いっぱいにすい込んできた世代が、せっせと音楽に、映画に、演劇に、涯は政治にからだを預け、そのなかで栄養を摂り、生きてきた。それがいま、「なんですか、この慈悲心のない、みせかけだけの時代は」と、不愉快きわまりない。が、それをぐっとのみこんで、「まあ、遊ぼじゃないか」と集まったものどうし、戯れ、じぶんたちのすきな世界をいつまでも求めて、ひとびとから距離を置き、いや、距離を置かれ、忘れ去られるのは、それはそれでさみしいなと、嘆いたりもするが、それよりずっと大切なじかんがあると、朝から晩までうろたえることをやめない、この作品は、そんな輩たちの、哀愁ただよう活劇&ど喜劇で……あ、そういえば、どこかの小説家が、どこかにこんな言葉を残していたらしい。「なにか言いたいやつは、みんなどこかおかしい」。
どうか、日頃の鬱憤をありったけ持ち込んで、私たちの、架空に遊ぶ無邪気なさまを観ていただければ、きっと心は晴れやかに!

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