園子温作品で映画デビュー“役柄に没頭する”女優 鎌滝えり初主演は「悩んだ」家計支えるデリヘル嬢役

引用元:中日スポーツ

 来年2月29日公開予定の映画「子どもたちをよろしく」(隅田靖監督)で初主演する女優鎌滝えり(24)が本紙のインタビューに応じた。今年は園子温監督の映画「愛なき森で叫べ」(Netflix配信)で複雑な心理状況に追い込まれる役柄を演じ、ハードな撮影経験も積んだ。最新作の公開を前に初のヒロインにかける心境を聞いた。

 映画デビューとなった「愛なき森で叫べ」では主演の椎名桔平演じる冷酷な犯罪者に籠絡される娘を演じた。「役作りのために実際に起きた事件を調べて役柄をなりきれるよう神経を使った」。初の芝居とあって「感情表現、叫び声ひとつにも違いがあり、監督には熱心に指導してもらえた。けど、極地まで追い込まれたこともあり、(撮影の)2カ月間役柄から離れられなくなった」と振り返る。

 元々、大の映画好き。「世の中にいろんなことが起きるのはなぜか、その経緯は?そんなことを調べるのも好きで、映画の中で演じるときも常に考えている」と好奇心旺盛だ。しかし、モデルデビューする前は「人前に出るなんて考えられなかった。演技を学ぶため学校に通い、役を通じてこそ自分が存在できることが分かり、すごく変わりました」。


園子温作品で映画デビュー“役柄に没頭する”女優 鎌滝えり初主演は「悩んだ」家計支えるデリヘル嬢役


鎌滝がヒロインを演じた映画「子どもたちをよろしく」のワンシーン

 初主演作ではDVの義父、無力な母親と弟という荒れた家族が舞台。鎌滝は娘でデリヘル嬢をしながら家計を支える役を演じる。弟に秘密にしていた仕事。複雑な家族関係を絡め、物語が展開していく。

 「(デリヘル嬢という)役には悩んだ。現実にその仕事を選んだ女性はいる。そして選んだ理由が必ずあると思う」と熟考し、撮影に臨んだという。放心状態になることもあった「愛なき―」とは異なり、アットホームな雰囲気で撮り終え、「弟や家族との絆を発信できれば、と充実感がありました」と手応えを感じている。

 「調べごとが好き」。特に実際には体験していない「昭和」に興味がある。「ジュディ・オング、ジュリー(沢田研二)、久保田早紀の『異邦人』、『そして僕は途方に暮れる』(大沢誉志幸)…。歌詞がすごくドラマチックでしょう」と“昭和”が次々に飛び出してきた。「役柄に没頭するため現実の事件の背景や歴史を調べるのもロマンがあるからだと思う」。

 まだ女優の道に踏み出したばかり。「今はどんな女優を目指すと言うより、どこに向かうか未知の世界。映画だけでなく、テレビドラマの世界も違うだろうし…」と、夢と戸惑いが交錯する。

 「子どもたち―」が描く家庭内暴力など、実際に悲しいニュースを目にする機会も多い。「現実社会でそんな苦しい思いをしている人がいる。映画だけど、ノンフィクションにも思え、この(主演)映画が何かの波になればうれしい」とことさら優しい表情を見せた。

 ▼鎌滝えり(かまたき・えり) 1995(平成7)年4月7日生まれ、埼玉県出身。2012ミス・ティーン・ジャパンで準グランプリ、モデルとしてデビュー。15年度トリンプイメージガール。19年10月Netflix配信の映画「愛なき森で叫べ」(園子温監督)に出演、20年2月公開の映画「子どもたちをよろしく」でヒロインを務める。身長170センチ。趣味は銭湯通い、歌謡曲など「昭和」ものを調べること。特技は手話。